この慣習になぞらえて、12月1日~25日の間に毎日みんなで記事を投稿しあう同じ名前のキャンペーンが2012年頃から人気を集めています。このようなアドベントカレンダーを作成・管理・表示できるサービスとしては、
Adventarや
Qiita Advent Calendarがよく知られています(Qiitaには
2011年のカレンダーも残っていますが、カレンダーが1つしかなく実験的な試みだったようです)。
僕もいくつかのカレンダーに参加していて、既に何個か記事が出ています。
あまねけ!の記事一覧は年ごとに区切られているので、後で振り返ったときに記事が少なくてがっかりしないための取り組みとして、かなり助けられています。
これらのサービスは、単体で記事の投稿・表示を担っているわけではなく、URLで示すことができる記事なら何でも登録することができます。多くのユーザー生成コンテンツ投稿サービスは自分のドメインに他人のコンテンツを抱え、管理することに腐心していますが、コンテンツ自身ではなくコンテンツの集合に意味を持たせるという点で本質的に異なります。
アドベントカレンダーは、インターネットにおけるお祭り性の実装の一つです。お祭り性というのはハレとケの区別の上に成り立つ特別な性質で、区切られた時間と空間に名前を付けることで意味を持ちます。地域のお祭りがハレの日なのは当然ですし、商店街の歳末福引セールだとか、現地で開催される同人誌即売会もお祭り性に依拠した取り組みです。
インターネットでは、空間の縛りがなくなったことで少し形を変えていますが、少なくとも時間だけを区切ることでお祭り性を表現することができます。例えば、通販サイトで終了までの時間を1秒ごとにカウントダウンしているセールを見たことがあるでしょう。通販サイトで買い物すること自体はどこからでも可能ですが、やはりお祭り性に依拠しています。
このように、アドベントカレンダーはコンテンツの集合を時間的な区切りの上で楽しむための企画であり、コンテンツ自体を同じドメインの下に抱える必要がないのです。
近年、VR空間上で同人誌即売会が開かれるようになったのは、ハレの日に空間の区切りを取り戻して、より強固なお祭り性を楽しむための取り組みです。時間や空間に縛られないことは強力な進歩である一方、不便さゆえに享受していた逆説的な利点をすっかり排除してしまうかもしれないのです。