匿名配送のこと
昨今、オンラインで開かれる同人誌即売会が増えている中で、グッズや印刷版の同人誌を宅配便などで配送するケースが増えています。そこで問題になるのが、差出人と受取人の両方が個人であるということです。つまり、差出人または受取人の一方が企業や団体である場合に比べて、住所が不適切に取り扱われる可能性が高くなります。
「住所が不適切に取り扱われる」とは、差出人が受取人の住所を知ってストーカー行為に及んだり、逆に受取人が差出人の住所を悪用するケースが考えられます。安易に住所を明かしたせいで、
インターネットでの軋轢をきっかけに殺人事件が起こることさえあるでしょう。同人誌の購入でしか接点のない受取人に住所を明かしたり、明確なプライバシーポリシーを持たない差出人に住所を明かすのは大きなリスクを伴います。このような懸念を抱えたまま円滑な輸送を実現するには、住所を明かさずに配送して受け取るという一見矛盾した課題を必要する必要があります。
このような需要に応えるために、宅配業者では匿名配送が可能なサービスを用意しています。例えば、
宅急便をスマホで送るでは発着地の営業所単位まで、
ゆうパックスマホ割では、発着地の郵便局やコンビニ単位までは住所を隠せます。また、メルカリなどのCtoCサービスでも、
メルカリらくらく便のような匿名配送可能なオプションを用意していることがあります(運送業務自体はヤマト運輸との提携です)。
これらのサービスは、信頼できない差出人と信頼できない受取人を、互いの住所を知りうる第三者に経由させる手法といえます。ここで、日本郵便やヤマト運輸は信頼に足る存在として取り扱われていることに注意が必要です。前述の通り、企業や団体は住所の取り扱いに厳格なルールを設けており、従業員が個人情報を不正利用するハードルも高いため、この仮定は基本的に正しいでしょう。
配送業者さえ信頼できない場合に、匿名通信の方法として単純に思いつくのは、Torのように箱を入れ子にして複数の業者を経由するような方式です。しかし、この方法はそもそもTorと前提が異なるのでなかなか上手く動作しません(差出人は受取人の住所を知っている必要があるため)。途中の配送業者と受取人には住所を隠すことができるものの、差出人さえ受取人の住所を知らずに配送するには、もう少し工夫する必要があります。
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