こんにちは、あまねです。
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人間と科学
文フリ34だったこと
5/29(日)は第三十四回文学フリマ東京でした。みなさんは会場に来てくれましたか? 僕が所属している変態美少女ふぃろそふぃ。は、前回と同様に評論情報島のト-9~10でたのしい企画や新刊・既刊各種を展開しました。
今回の個人的なふりかえりについては、あまねけ!で「文フリ34のふりかえり」というシリーズを4記事(概要1+詳細3)程度にまとめる予定です。このニュースレターが発行された段階では、概要とポストカードについての詳細記事が出ていると思います。よかったらお読みください。
たのしい文化祭まとめ
今回の文フリは企画が盛りだくさんで、全てを完全にやりきることはできませんでした。取りかかりの遅さや見積もりの甘さがまた悪さをしていますね。合同誌の本編執筆はもちろん、電子版配布用ポストカードのデザイン調整や、電子版のダウンロードシステム開発、無人販売システム開発――と詰め込んでいった結果、ポスター企画についてはアイデア段階のまま形にならずに当日を迎えてしまいました。
それでも、全ての企画が中途半端に終わって後悔するという状況を避けられたのは不幸中の幸いです。今回できなかったポスター企画は次回しっかりと取り組む、という前向きな気持ちで次回の計画を立てようと思います。
ちなみに、次回の文学フリマ東京からはナンバリングが後置のアラビア数字(文学フリマ東京35)に変わります。いかにも同人誌即売会っぽい見た目で新登場! 公式サイトの記載によれば、今年11月以降の文学フリマは全てこの表記になるらしいです。
security.txtのこと
先日、あなたのWebサービスの脆弱性を発見者から教えてもらう方法 - RFC9116が発表されましたという記事を読み、自分が運用している各サービスにも security.txt
を置いてみることにしました。
Webサービスのセキュリティリスクが、リスクの重大性を理解している独立したセキュリティ研究者によって発見された場合、それらを適切に開示するためのチャンネルが不足していることがよくあります。 その結果、セキュリティの問題が報告されないままになる可能性があります。 security.txtは、組織がセキュリティ研究者がセキュリティの脆弱性を安全に開示するためのプロセスを定義するのに役立つ標準を定義しています。
RFC 9116の security.txt
は、当該Webサービスで脆弱性を発見した際の報告先やポリシーを提示するための標準規格です。具体的には、Webサービスの /.well-known/security.txt
に改行区切りで Key-Name: value
形式の設定項目を記載するもので、フォーマット自体はそんなに難しいものではありません。あまりイメージが湧かなければ、 robots.txt
のようなものだと思えばよいでしょう。
RFC 9116の2.5. Field Definitionsに記載されているとおり、2つの必須項目( Contact
と Expires
)および6つの任意項目( Acknowledgments
Canonical
Expires
Encryption
Hiring
Policy
Preferred-Languages
)、さらに必要に応じて拡張項目を利用できます(2.4. Extensibility)。
これらの設定項目を手書きしてフォーマットに沿っているか確認するのは面倒なので、記事中で紹介されているsecurity.txtジェネレータを使うと便利です。
このジェネレータを使って、あまねけ!にもhttps://ama.ne.jp/.well-known/security.txt
を配置してみました。今は単なる静的サイトなのであまり意味はなさそうですが、うっかり車が通れるほどのどでかい穴を開けてしまわないとも限りません。もちろん、アマネイメージズなどのWebサービスにも導入済みです。
そういえば、 security.txt
のEncryptionの記入にあたって、なぜかKeybase上の鍵が見えなくなっていたことに気付いたので、関連していそうなIssueを参考に削除&再登録を行いました。しばらくKeybaseを使っていない人は、一度鍵の様子を確かめてみるといいかもしれません。
アマネイメージズ
結局、ユウちゃんが何を考えているのかはよく分からなかった。
せっかくの休日なのに、無遠慮な着信音でいつもより二時間早い起床を強いられる。私の不機嫌そうな声なんて全く気にしない電話の主は「今からお出かけしましょうよ」と、昔二人で見た百合アニメの……えぇと、名前を忘れたけど、そのキャラクターのセリフをまねしてみせた。窓から外の駐車場を覗き込むと、やはりセーラー服を着た怪異が私に手を振っている。
外に出ると、ユウちゃんが「来ちゃった」と言ってニコニコ笑っている。今どきカーナビもない「わ」ナンバーの古い軽自動車には、後部座席にたくさんの日用品や服やタオルをぱんぱんに詰めたトートバッグが雑多に積まれていて、あぁまたいつもの家出風旅行ですかと思いながら助手席に乗り込んだ。
「お互い社会人なんだからさ、事前にちゃんと連絡したらどう?」
「でも、どうせ暇でしょ? 仕事ならホテルでやってよ」
私にもちゃんと仕事があるのにさ。まぁ、いつでもどこでもできる仕事だから、別にいいけど。おかげで、ユウちゃんの好きなときにいつでも会えて、どこでも一緒に行けるんだよ。私が丸の内勤務のフルタイムOLだったら、ユウちゃんはきっとあの生活に耐えられなかったはずだもん。感謝してよね。
ユウちゃんは好き勝手おしゃべりしながらどこまでも車を進めていく。右折とか左折とか高速とか山道とか、そんな小さなことは気にしない。とにかく遠くへ進みたいだけ。まるで、生まれる前からそう本能に刻まれていたように。だから、ユウちゃんにカーナビは必要なかった。
三時間ほど車を走らせたくらいで、山を二つ越えた先の国道八号線沿いに見つけた砂浜に立ち寄ることにした。よく晴れた空はしかしずっと向こうが曖昧に霞んでいて、泳いでいるうちに水平線の隙間に落ちてしまうような心地がする。
ねぇユウちゃん、なんか終点に来たみたいな顔してるけど、家出はまだまだ始まったばかりでしょ? さっきちらりと見たレシートによれば、予定通りなら一週間、実際はさらに数日伸びるのがお決まりだった。もう少し進めば大きな港町に出られるし、場外市場なら安くて美味しい海の幸がいくらでも手に入るのに。
そんな、旅の終わりみたいな顔しないでよ。
「やっぱり、旦那と別れない方がよかったかも」
「えっ、嫌いだったんじゃないの?」
「そりゃそうだよ! でもさ、だからこそ好き勝手言えるっていうか。信頼ってわけでもないけど、こう……」
サンドバッグ?と言いかけたけど、ユウちゃんが気に入ったら癪なのでやめた。ユウちゃんの気まぐれで人生がめちゃくちゃになった男のことなんてどうでもよかったから。
ユウちゃんがあの男をサンドバッグなんて楽しげに呼んで、面白おかしく思い出話なんて語り始めたら笑っていられる自信がない。
「ねぇ、ユミと一緒なら、こんなことにはならなかったと思う? あたしたち、もっと上手くやれたかな」
「ユウちゃん。私、お腹空いちゃった。続きはフードコートで話さない? たら汁が有名なんだって」
「……うん。そうだね」
あぁ、ユウちゃんはどうしようもない後悔をずっと捨てられずにいるのだ。まるで、わんわん泣きながら私を崖から突き落とすみたいに。あぁ、こんなことなら、丸の内でOLでもやっておけばよかった。自由な働き方なんて、自由な恋愛なんて、ばかみたい。