クラウドストレージのこと(持続可能性・検閲可能性)
ただし、
Dropbox Backupプランのヘルプページを見ると、「パソコン1台」や「1台のパソコン」という表現が目立ちます。さらに「ローカルストレージ容量を拡張するためのものではありません」とある通り、バックアップというサービスの目的から考えると、クラウドのみにデータが存在する状況を作るのは難しそうです。
容量無制限のクラウドストレージに対する私の姿勢については、
#15でお話しした通りです。しかし、これはあくまで持続可能性の観点から述べたものです。Dropbox Backupのようにユーザーのローカルストレージで実質的な上限を設けるものは、人間の胃袋を実質的な上限とした「食べ放題」のようにビジネスとして持続する可能性が残されています。
さて、今回のDropbox Backupの発表について、SNSでは前述の通り「容量無制限」に注目した冷ややかな声が多いです。またそれに便乗して、Dropboxは検閲をしているので使わない方がいいとか、GoogleDriveを使っているけどいつBANされるか不安になりながら使っている、という意見もちらほら流れてきます。
クラウドストレージについて重要なことは、 持続可能性 と 検閲可能性 です。持続可能性は、企業やサービスがどれほど持続できるかというもので、高ければ高いほどいいでしょう。基本的には、どのサービスを使うか選んだ時点で決まっています。
一方、検閲可能性は、運営者や政府がアップロードしたファイルの内容やハッシュを知ることができるかどうかというもので、低ければ低いほど価値があります。持続可能性より広範な概念であり、アーキテクチャレベル(E2EEやゼロ知識証明などの導入)、法レベル(利用規約などによる保護)、ユーザーレベル(VeraCryptやその他暗号化手段などの導入)のいずれかで解消できるでしょう。
今回の件に限らず、GoogleDriveやDropboxは検閲をしているとか、OneDrive for Businessは検閲をしていないから大丈夫といった話題はよく見かけますね。このような話題で最も愚かなのは、検閲可能性を脅威に感じつつ何もしていない人でしょう。クラウドストレージへの不安を訴える声は共感を集められますが、それだけです。
あなたの安全性を向上させるのは、検閲可能性を捨て去った まともな クラウドストレージへの移行か、 まともではない クラウドストレージの検閲から逃れる自衛手段の導入しかありません。